現代は科学が発達し、生活が豊かになり、欲しいものがすぐ手に入る時代となりました。価値は多様化し、ある一つの生き方を強いられることはなくなりました。現代では私たちの人生の選択枝が飛躍的に広がりました。現代は悩みなき時代になったのでしょうか。
いいえ、多くの人がさまざまな悩みを抱えて苦しんでいます。欲望が拡大すればするほど、自由であればあるほど、私たちは悩みます。従って悩まないようにするにはどうしたらよいか、対人関係をうまくやるにはどうしたらよいのか、自分の不安をコントロールするには、などなどのマニュアル本が巷にあふれています。これはいわば不安、悩みのコントロ-ル、つまり不安や悩みを減らそうとする試みです。
その結果はどうでしょうか。うまく悩みがコントロールされるようになったでしょうか。逆にさらに強く悩むようになったのではないでしょうか。それとは異なる考え方があります。私たちが生きていく上で必要なものと不安や悩みを受け入れ、それを生かしていこうと試みることです。それが東洋の伝統に基づく森田療法の基本的考えです。
現代の人々の悩み(パニック障害、強迫性障害、対人関係で悩む人、慢性抑うつ、引きこもり、不登校、出社拒否、燃えつき症候群、中年期や老年期の悩み、家族の悩み)に対して森田療法や森田療法的アプロ-チが有効であることが分かってきました。この治療法が持つ東洋的な人間理解や東洋の知恵というものが、現代社会では今まで以上に求められているのではないでしょうか。