コロナパンデミックと森田療法(3)
-コロナ不安・うつへの行動処方-
森田療法研究所・北西クリニック 北西憲二
このような不安の根っこには、安心して暮らしたい、不安なく過ごしたい、よりよく生きたい、という自然で健康的な生きる欲望、生きる力があります。
コロナ不安・うつに陥ると、この生きる力が、不安・うつを打ち消そうとする方向に向かってしまいます。そして情報をあさり、安心を得ようとし、逆に不安・うつが強まります。
ではどうしたらよいでしょうか。
密閉空間、密集場所、密接場面を避けるということは、閉鎖的な空間での生活を強いられます。いわば社会的引きこもりが要請されているのです。そこでの心の持ち方と行動の仕方について、述べてみます。
1.不安・うつを受け入れること
不安・うつになることは、自分の弱さを示しているのではなく、このような状況ならば当然のこと、あたりまえのこと、と認識することです。
そしてコロナ不安・うつに圧倒されないで、それを持ちながら、自分としてできることをするしかない、と開き直ってみることが大切となります。
単純ですが、難しいことでもあります。
2.発想の逆転
ここで私たちは、発想の逆転を必要とします。ピンチはチャンスという発想の転換です。
限られた生活空間の中で、今まで出来なかったことに取り組み、自分自身を磨き、成長させるチャンスと捉えて、行動してみることです。これは引きこもりの人たちやうつで休職中の人たちにも勧めている行動処方です。
3.行動処方
具体的には、生活を維持するための作業、例えば料理、洗濯、掃除、読書などに取り組むことです。また体のケアをし、ウオーキングなどをして自然に親しみ、家族と一緒に家事を分担し、共に遊ぶことなどです。
これを受け身でするのではなく、○○したい感覚を磨き、それを感じたら、それにす~と乗って動いて行くことが重要となります。
コロナ不安・うつから、注意を外に向けて、日常生活の活動に注意を向け、それを維持し、そこで心地よい行動を見つけて行くことが、この危機を乗り越える力となります。
自分を内省し、一人でいる時間を見つけ、一人でいる能力を磨くこともこのような時には、大切となります。それが情報パンデミックから距離を取り、他の人との適度な距離感を保てるようになります。
そしてこれが変化の時代に対応する力を磨くのです。
(2020/04/09)