コロナパンデミックと森田療法(2)
-コロナ不安・うつの悪循環-
森田療法研究所・北西クリニック 北西憲二
死を恐れ、病を恐れるのは、人間の自然な心情です。しかしやっかいなことに、この不安、恐怖は、小石を池に投げ込んだ時のように、私たちの心の中で、さらに社会的行動へと広がっていきます。
私たちがコロナ不安・うつに陥ると、それに注意を引きつけられ、それにとらわれて、それしか考えられないような状態となります。コロナ感染のことしか考えられないような状態、視野狭窄状態となっているのです。
それだけでは終わりません。コロナ不安・うつをなんとかしなくては、と不安を打ち消す行動、過度の回避行動、あるいは気晴らし行動に走ります。これらの行動は、何を生むでしょうか。
打ち消し行動は、次の打ち消し行動を引き起こし、コロナパンデミックに対する不安・うつを強めます。この不安に駆られた行動は他の人にも影響を与え、TVのニュース、SNSなどを通して拡散し、強まります。それがまた人びとの不安に基づいた行動を引き出すのです。コロナ不安・うつの感染拡大です。
例えば、トイレットペーパーを毎日不安に駆られ、買ってしまうと他のことも不安となり、不安が不安を呼ぶ状況となります。それがニュースとなり、SNSなどで拡散し社会的現象となるのです。悪循環です。
あるいは過度の回避行動は、社会的引きこもりを助長し、それがコロナ不安・うつを強めます。気晴らし行動は、感染のリスクを強め、結果として自分も他の人も苦しむことになります。
これは家族も巻き込みます。閉塞状況では、家族同士の心理的、物理的距離が近くなり、お互いの言動に注意が集中します。そしてお互いが衝突し、攻撃的になり、DV(家庭内暴力)や子どもへの虐待を引き起こす危険性もあります。
このような悪循環が私たちと社会全体の不安・うつパンデミックを強めていきます。この悪循環から脱するには、情報をある程度、絞り込み、正しいコロナウィルス対策を知り、正しく恐れ、不安を打ち消す行動をしていないかどうか、過度の回避行動、あるいは気晴らし行動をしていないかどうか、を自覚することが必要です。
そこからこの悪循環を抜ける方策が見えてきます。
それを次に述べていきます。
(2020/04/09)